| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) L03-06  (Oral presentation)

重複感染における競争を通じての寄生者の多種共存
Coexistence of multiple parasites via superparasitism with competition

*山内淳(京都大学), 一色竜一郎(総合研究大学院大学), 入谷亮介(理化学研究所)
*Atsushi YAMAUCHI(Kyoto Univ.), Ryuichiro ISSHIKI(SOKENDAI), Ryosuke IRITANI(RIKEN)

 病原体や寄生者は、利用するホストをめぐって競争していると考えられる。それにもかかわらず、同一なホストを利用する複数の病原体の種や系統が一般に共存している。よく知られる例の一つは人に感染する肺炎レンサ球菌で、血清型と呼ばれる系統が90以上存在している。集団においていくつかの血清型を狙ったワクチンの接種を実施すると、それ以外の系統が増加する。また、個人への多系統の重複感染は多く見られるものの、通常、劇症は一つの系統によって引き起こされる。これらことは、系統間における競争的関係の存在を示唆している。こうした競争的な複数の病原体が共存できるメカニズムを理解するために、理論的な解析を行なった。ホスト個体を病原体のコロニー形成のためのパッチとみなすと、生物がパッチでのコロニー形成をめぐって競争するコロニー形成モデル(Levinsモデルの多種版)が応用できると考えた。ただし、もともとのモデルではパッチは環境として与えられ、その数は変化しない。それに対して病原体の場合は、パッチに相当するホストの数は感染状況を反映しながら変動する。そこで、ホストの個体群動態を導入し、ホストを巡る競争の能力と他の形質(病原性あるいは感染力)の間でのトレードオフを仮定し数理モデルを構築した。トレードオフ関数が与えられれば存続する系統を数値的に求めることができ、されにトレードオフと存続系統から平衡状態での各系統の感染密度を一般解として決めることができた。それにより、トレードオフの存在下で多系統が共存可能なことが明らかになった。また、ホストの個体群に密度依存性がない場合にはホストの感染数は永続的に振動するのに対して、負の密度依存性がある場合には平衡状態に収束することが解析的に示された。ホストの個体群動態を踏まえた多系統の病原体の共存に関するこれらの知見は、これまでの理論研究にはない新しい成果である。


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