| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) L03-07 (Oral presentation)
地球上の全生物種のうち,昆虫は50%以上を,高等植物は約20%を占める。昆虫の中では,植食性昆虫が全種数のおよそ半数を占め,高等植物とともに地球上の生物多様性を構成する重要な要素となっている。したがって,生物多様性が維持される仕組みを理解するためには,植食性昆虫と植物との相互作用を,その本質的特徴を捉えた大規模な数理モデルを用いて解析する必要がある。
植物は適応度を高めるために植食に対する防御機構を発達させ,植食性昆虫はそれらの防御を克服する戦略を進化させてきた。植物の防御は一般に,質的防御と量的防御に分けられる。質的防御とは,少量でも昆虫の代謝を阻害する二次代謝産物によるものであり,その結果,限られた植物種に適応したスペシャリスト植食者の進化を促す。一方,量的防御とは,リグニンやタンニンのように消化が困難な構造化合物による防御であり,質的防御を克服できない植食者は,量的防御の悪影響を緩和するために,多様な植物種を摂食するジェネラリストとなる。
スペシャリストは,他の多くの昆虫には利用不可能な植物種を利用することで昆虫種間の間接競争を回避できるが,好適な主要寄主植物が減少した場合には絶滅リスクにさらされる。これに対して,ジェネラリストは特定の植物種が失われても他の寄主へ切り替えることができる一方,利用する植物種が重複することによって他のジェネラリストとの消費型の間接競争に巻き込まれる。
本講演では,相互作用する植物と植食者の離散時間における個体群動態を記述するため,連立差分方程式からなる数理モデルを提示する。特に,間接効果に注目し,植物間の種間競争の強さ,スペシャリストが利用する補助的寄主植物の割合,ならびに各ジェネラリストが摂食する植物種の多様性といった主要パラメータが,植物—昆虫群集におけるスペシャリストとジェネラリストのバランスに及ぼす影響の解明を目指す。