| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) L03-08 (Oral presentation)
環境ストレスは、耐性に応じた種構成の変化(生態的応答)と遺伝的適応による形質変化(進化的応答)を群集に引き起こす。一般ロトカボルテラモデルに基づき、群集における形質変化の一般則を導いた。進化的応答がない場合、群集平均値の変化は、形質と内的自然増加率の共分散と、形質と種間相互作用能力の共分散の和に等しくなる。さらに、進化的応答を加えた式に拡張した。これにより、形質の群集平均変化における、生態的応答と進化的応答との相対的寄与を評価できる。
これらの統計的近似が、群集構造に影響されるかを、ストレスへの耐性形質に着目し、制約のあるランダム群集に基づくシミュレーションによって調べた。その結果、種間相互作用係数の操作により、最大連鎖長と種間結合度が増加しても、群集形質の応答はほとんど影響を受けなかった。また、耐性形質の適応度コストを大きく設定して表現型分散を低下させると、群集形質の応答も減少した。どの場合も一般則はほぼ正確な予測値を与えた。これらの結果は、群集の複雑性は、耐性形質の応答に影響しないが、機能多様性や種多様性の消失は群集の環境応答を低下させることを示唆する。
2形質に拡張した生態的応答モデルを、霞ヶ浦動物プランクトン長期データに適用した。環境因子として、水温と植物プランクトン密度、耐性形質として種の最適水温と閾値餌濃度を用いた。最適水温に対しては強い選択圧が検出された一方、閾値餌密度に対する選択圧は検出されなかった。
自然選択の基本定理によると、「平均適応度の進化率は適応度の相加遺伝分散に等しい」。群集形質の動態においても同様の定理が成立し、種間および種内選択過程では群集の適応度は増大傾向にある。さらに、シミュレーションにより、群集の形質動態への進化的変化の寄与は大きいが、「群集の適応度」への寄与は軽微であることがわかった。