| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) L03-09  (Oral presentation)

最大情報エントロピー法に基づく種個体数分布動態の数理モデル
Mathematical modeling of dynamical species abundance distribution based on maximum information entropy method

*梅村界渡(神戸大学)
*Kaito UMEMURA(Kobe University)

種個体数分布(Species abundance distribution: SAD)はある生物群集において1種を取り上げた際の個体数を確率変数とする確率分布と定義できる.SADは共通の地域や資源を利用する種の多様性を観測するためによく測定される個体数ランク図(Rank graph 各種の個体数を大きい順に並べた図)とほぼ等価なので,確率的な理論と統計的な観測データを比較しやすい利点があり,これまでにSADの関数形を説明・予測するための様々な数理モデルや理論が研究されてきた.そのような理論の1つに,最大情報エントロピー法(Maximum information entropy method略してMaxent)という情報理論における最適化手法を応用したThe maximum entropy theory of ecology: METE(ミート)がある.METEは定義された群集における種数や全個体数などのマクロ変数の値を入力情報としてトップダウン的に各種個体数などのミクロ変数の確率分布を推定し出力する.これは個体・個体群の集合と相互作用からボトムアップ的に群集構造を求める理論とは対照的であり,また中立理論のように確率過程を用いるのとも別の枠組みである.METE自体は様々な分布・指標を扱うが本発表ではSADに焦点を絞る.METEは確率変数と最適化拘束条件の選択が先決であり,その後は比較的少数のマクロ変数の情報があれば任意パラメータなしで分布の関数形が予測できる利点がある.しかし力学系理論などのように動態は扱えず,また特に時間変化の速い系では予測と観測が合いにくい課題がある.そこで本発表ではMETE拡張案の1つとしてシンプルな個体群動態モデルを組み合わせたDynaMETE(ダイナミート),およびそれをより一般的・解析的に整理した枠組みのDynamic maxent across entwined scales: DyMES(ダイムス)の紹介を通して,SAD動態の情報論的モデルについて議論する.重要なアイデアは新たにマクロ変数の時間微分を追加の拘束条件とすることであり,結果としてそこからSAD関数形の時間変化やそのヒステリシス的挙動などが導かれた.


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