| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) M01-10 (Oral presentation)
植物上の節足動物群集の把握は、生物多様性評価や群集生態学的研究において重要であるが、従来の調査法は労力や分類学的知識を要する。近年、水域を中心に環境DNA(eDNA)を用いた生物調査が進展しており、植物表面に残留したDNAを用いた陸域生物群集の把握も試みられている。特に、群集動態の時系列的な評価には、植物体を傷つけない非破壊的なDNA回収手法の確立が求められる。複数の非破壊的eDNA回収手法を同一個体群に対して比較評価した研究は限られている。
本研究では、木本植物上の節足動物群集を対象として、我々が開発したプラント・フロー・コレクション法を含む4種類の非破壊的eDNA回収手法(拭き取り法、袋掛け法、落枝洗浄法、樹幹流法)の特性を比較し、群集モニタリングへの適用可能性を評価した。奈良県北部の近畿大学農学部里山において、コナラ Quercus serrata 6本を対象に、2020年6月から2021年10月にかけてeDNA調査を実施した。また、捕虫網によるスウィーピング法による採集調査を併用し、従来法との比較を行った。
その結果、すべてのeDNA回収手法において陸生節足動物のDNAが検出された。拭き取り法および袋掛け法では、カメムシ目やトビムシ目が優占し、カメムシ目はスウィーピング調査でも多数確認された。落枝洗浄法では、ハイイロチョッキなどの樹上性昆虫を検出できたほか、樹幹流ではトビムシ目が高頻度で検出され、樹皮に生息する分類群の把握が可能であった。特に、目視調査では検出が困難なダニ目やトビムシ目がeDNAでは多く検出された。
以上より、eDNAは発見が困難な微小節足動物の検出に有効であり、回収手法ごとに検出される分類群が異なることが示された。したがって、対象生物の生態特性に応じてDNA回収手法を使い分けることが、木本植物上の節足動物群集モニタリングにおいて重要であると考えられる。本手法は森林生態系における長期的な群集モニタリングへの応用が期待される。