| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) Q01-06  (Oral presentation)

樹木成長とともに増加する力学的負荷は呼吸増加を促し成長制限要因となるか
Does the increasing mechanical stress associated with tree growth enhance respiration and become a growth-limiting factor?

*森茂太(山形大学), 黒澤陽子(林木育種センター), 相蘇春菜(山形大学)
*Shigeta MORI(Yamagata Univ.), Yoko KUROSAWA(Forest Tree Breeding Ctr.), Haruna AISO(Yamagata Univ.)

樹木個体は、呼吸で作るエネルギーを原動力にして実生から大木へと1兆倍の重量幅で成長し、幼樹期に急だった成長は徐々に緩やかとなり成木期では頭打ちを示す飽和型成長をするが、飽和の制御機構は今も未解明のままである。呼吸は一般に、幹、太根等の非同化部内に低呼吸活性の組織が多く蓄積されるため、大個体ほど重量や表面積当りの呼吸は低いとするのが定説であり、呼吸を成長飽和の主要因とする論文は少ない。

ところが、根を含む個体呼吸を稚樹(本葉展開後)~大木(樹高34m)で正確に多数(サイズに応じた大小装置(1)に密封して)実測すると【一定サイズ以上の成木で重量や表面積当たり呼吸が下げ止まり、やや上昇する非線形傾向】を発見した(2-3)。論文では、定説と異なるこの現象への説明はほとんどない。その後、測定数を約1500個体に増やすと予想に反し【非線形傾向】は明確化した。

非線形が生じた原因解明のため、幹全体の呼吸を3次元的に測定したところ幹下部の太り、曲がり、根地際など風圧、雪圧、重力の力学的負荷が高い箇所で呼吸は高かった。この一部に力学的支持機能を担うアテ材も含まれる。常識を覆すこの傾向は、成長すると増える力学負荷に対抗したコスト増加を示す可能性が高い。我々は、定説に囚われ樹木成長飽和の重要因子を見逃していたようだ。従来、樹木個体呼吸を推定する際に重量に重量当たりの呼吸を乗じたため(呼吸と重量の)スケーリング式に自己相関が生じる等問題を含む論文は少なくない(4)。この非線形傾向は根を含む個性豊かな芽生え~大木の重量、呼吸の正確な実測(1-3)でのみ知ることができた重要な結論であろう。

1) Mori et al. PNAS, 2010, https://doi.org/10.1073/pnas.0902554107,
2) Kurosawa, Mori et al. Ann Bot, 2023, https://doi.org/10.1093/aob/mcac143
3) Kurosawa, Mori et al. Roy Soc B, 2025, https://doi.org/10.1098/rspb.2024.1910
4) Reich et al. Nature, 2006, https://doi.org/10.1038/nature04486


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