| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) Q01-08 (Oral presentation)
秋の紅葉の鮮やかさは重要な文化的生態系サービスであるが、その空間分布特性や生理生態学的背景は十分に解明されていない。本研究では、黄葉期における葉色の鮮やかさと黄葉直前の葉クロロフィル量、ならびに地形的位置との関係を、樹冠スケール(個体)および調査地スケール(マクロ)の両スケールで解析した。新潟県内の標高 300、600、900 m に位置する 3 か所のブナ(Fagus crenata)林において、マルチスペクトルドローンを用いて観測を実施した。ドローンから作成したデジタルサーフェスモデルを用いて樹冠の分布を推定し、樹冠ごとに平均の黄葉の色づきの強さ(VARI 指数)、4 種類の植生指数(NDVI、GNDVI、NDRE、LCI)、尾根谷の地形指数(TWI)および標高との関係を評価した。
マクロスケールでは、低標高域においてより鮮やかな黄葉が観測され、生産性や蒸発散ストレスを介した温度条件の影響が示唆された。一方、個体スケールでは、夏季後半のクロロフィル量(NDRE)が低い樹冠や、尾根部に位置する樹冠で、黄葉の色づきが良い傾向が認められた。黄葉の色づきとクロロフィル量との負の相関は、強光や乾燥、老化などのストレスを受けて低クロロフィル状態となった個体が、それに対する防御としてカロテノイド含量を増加させている可能性があると考えられる。また、尾根部で黄葉の色づきが良かったことは、尾根部における比較的強いストレス要因(乾燥・強光など)の影響を受けて生じていると考えられた。
以上の結果から、黄葉の鮮やかさは解析スケールによって異なる生理生態学的意味を持つことが示唆された。紅葉は文化的生態系サービスとしての価値に加え、森林におけるストレス状態を早期に検出する指標として、森林生態学および森林管理への応用可能性を有すると考えられる。