| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) Q01-14 (Oral presentation)
強光環境下において、植物は光化学系II(PSII)の光阻害を受ける。その防御機構として、キサントフィルサイクルの脱エポキシ化(DPS)を介した非光化学的消光(NPQ)による熱放散と、植物起源揮発性有機化合物(BVOC)の放出による活性酸素種消去・膜安定化が知られている。先行研究では、イソプレン放出を抑制したポプラでNPQが増加することが報告されており、両機構の相補性が示唆されてきた。しかし、自然条件下において多様な樹種を対象にDPSの動態とBVOC放出の関連性を検証した研究は乏しい。本研究では、BVOC放出特性の異なる温帯広葉樹8樹種(イソプレン放出種:コナラ・ミズナラ・ポプラの3種、モノテルペン放出種:アカガシ・シラカシ・スダジイ・クスノキ・ウラジロガシの5種)を対象に、暗条件・曇天・直達光の3光条件下で葉のキサントフィルサイクル色素をHPLCにより定量し、DPSを算出した。また、成木コナラおよび苗木ポプラを対象に、制御光条件と自然変動光条件下でLI-6400によるイソプレン放出速度と光合成パラメータの同時測定を行った。HPLC解析の結果、DPSは光強度の上昇に伴い全樹種で有意に増加した(ANOVA, F=69.03, p<0.001)が、BVOC放出タイプ間でDPSに有意差は認められず、DPSの光応答とBVOC放出特性との間に明確な関連性はみられなかった。野外測定では、イソプレン放出速度は日射強度の日変化と迅速に同調し、光合成活動と連動していた。一方、DPSはBVOC放出タイプによらず同様の応答を示した。これらの結果から、イソプレン放出は光合成電子伝達系と直接的に連動した防御機構であるのに対し、キサントフィルサイクルによる熱放散はそれとは異なる調節を受けており、両者はいずれも光防御に寄与しうるものの、その調節機構は独立していることが示唆された。