| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


自由集会 W32-2  (Workshop)

オオオサムシ亜属における交尾器の大型化に関わる進化発生機構
Evolutionary developmental factors of the exaggerated genital molphology in Ohomopterus ground beetles

*古本知奈美(神戸大学), 寺田夏蓮(神戸市立住吉中学校), 高見泰興(神戸大学)
*Chinami FURUMOTO(Kobe Univ.), Karen TERADA(Sumiyoshi JHS), Yasuoki TAKAMI(Kobe Univ.)

体内受精を行う動物の交尾器形態は急速に多様化し,種間の生殖的隔離をもたらすことで,種多様性の創出・維持に関わる.これまで多くの分類群で交尾器形態の多様化をもたらす適応的,歴史的要因が解明されてきたが,発生学的要因については十分に理解されていない.
オオオサムシ亜属が雄交尾器上にもつ交尾片は,種間や種内の集団間で形態が多様化している.特に,マヤサンオサムシとその近縁種の系統では,交尾片の巨大化に至る一連の変異がみられる.これまでX線マイクロCT解析によって,交尾片の巨大化は蛹期における形成時期や成長率の進化,蛹期後期に生じる空間的制限を回避する折り畳み機構の獲得,羽化後の伸長機構の獲得によってもたらされると明らかにされてきた.しかし,それらの結果を裏付ける組織学的知見はほとんどない.そこで本研究では,異なる交尾片サイズをもつ3種に注目し,X線マイクロCT解析と組織学的解析を用いて雄交尾器の発生過程を比較し,交尾片の大型化に関わる発生学的要因を明らかにしようと試みた.
組織学的解析から,交尾片の形成と伸長は,原基の細胞分裂による細胞塊の成長と,その後の細胞の再配置,細胞成長による伸長を経ることが明らかとなった.交尾片サイズの種間差は,細胞分裂による初期の成長期間の違いと関連する可能性が示された.
羽化直前の蛹の組織切片と,成熟した成虫のX線マイクロCT画像の解析から,交尾片の外骨格は羽化時にはまだ薄く,交尾片の基部は未完成であることがわかった.よって,羽化時の交尾片サイズの変化は,羽化後の外骨格の肥厚と関連する可能性が示唆された.
最も大きな交尾片を持つ種で見いだされた,蛹期後期に空間的制限を回避する折り畳み機構と,羽化後の伸長機構は,他の2種では観察されなかった.よって,交尾片の大型化には複数の要因が関わるが,巨大化には特に蛹期後期(8日齢)以降の発生過程の変化が強く関わる事が示唆された.


日本生態学会