| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
自由集会 W32-3 (Workshop)
動物は多様な戦略を用いて異性にアプローチする。行動遺伝学のモデル種であるキイロショウジョウバエのオスは翅を震わせて「ラブソング」を奏でることでメスに求愛する。一方、ヒメウスグロショウジョウバエのオスは消化管の内容物を吐き戻し、メスに「プレゼント」として贈呈する独特な求愛行動を示す。こうした求愛行動の種間差は、どのような脳内メカニズムによって生み出されるのだろうか。
この問いに迫るために、ヒメウスグロショウジョウバエとキイロショウジョウバエの脳内の神経回路を単一ニューロンの解像度で比較解析した。その結果、ヒメウスグロショウジョウバエの脳内には、プレゼント贈呈に重要な役割を果たす神経細胞同士の接続、すなわち『配線構造』が存在することを見出した。さらに、この『配線構造』を遺伝子操作によってキイロショウジョウバエの脳内に再現したところ、オスは従来の求愛行動であるラブソングに加えて、消化管の内容物を吐き戻してメスに呈示する行動を示した。これらの結果は、特定の神経細胞における配線パターンが求愛行動を規定することを示唆する。さらに、南西諸島において植物と共生して、盛んに群れを形成するショウジョウバエの求愛行動を観察した。その結果、「歌」や「プレゼント」といった儀式的行動を示さず、オスがメスと出会った直後に交尾を試みる種が確認された。本発表では、至近要因と究極要因の両側面から、求愛行動の進化について議論したい。