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一般講演 A1-05

徳島県阿南市大潟町人工干潟におけるシオマネキの現状と保全

*佐々木 由実,大田 直友,橋本 温,加藤 研二(阿南高専専攻科・構造設計工学専攻),石居 玄,佐古 直樹(阿南市土木課),飯山 直樹(株式会社エコー建設コンサルタント)

徳島県阿南市大潟町では,漁港改修にともなう埋め立て工事が平成元年から進められており,埋め立て予定部分に浚渫土や建設工事残土を投入していた.ところが,平成15年夏,できあがった潮間帯干潟部分に大量のシオマネキが生息していることが判明した.よって阿南市は工事を中断し,平成16-18年にかけてベントスの現況調査および改修計画の変更を行った.シオマネキが生息しているのは,堤防に囲まれ奥まった干潟部で,海水は50mの開口部と湾奥の2本のパイプから交換されている.生物相調査の結果,甲殻類26種,貝類41種,魚類10種が確認され,そのうち,甲殻類8種,貝類3種,及び魚類2種の徳島県RDB種も確認された.シオマネキは,ヨシ原周辺の泥質地帯を中心に1342個体確認され,埋め立て計画地に生息するシオマネキを推定すると1699個体となった.一方,ハクセンシオマネキは,砂質及び硬い泥質を中心に広範囲に分布していた.生息個体数は推定で80899個体となった.両種とも小型の個体が確認されることから,継続的な加入があると判断された.しかし,大潟湾を含む橘湾全体の干潟9カ所を調査したところ,ハクセンシオマネキなどのRDB種の多くは分布が確認されたが,シオマネキの分布は確認されなかった.よって,大潟のシオマネキは,北に25kmほど離れた吉野川,勝浦川から幼生が分散してきた可能性が高い.必要な漁港改修とシオマネキの保全を考慮した結果,当初の埋め立て予定約38000haを約10000haに縮小した概略設計が決定された.今後は,市民によるシオマネキを活用した大潟町の活性化ワークショップや干潟研修会の開催などを通して,シオマネキ保全と開発の両立を目指す予定である.

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