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一般講演 A1-06
シギ・チドリ類は干潟や隣接する後背地を餌場として利用する渡り鳥であり,干潟保全のシンボルとして高い関心が持たれている。これらの個体数変動の実態を明らかにすることは,保全生態学的に非常に重要であるが,その長期個体数変動の分析を行った知見は国内では非常に少ない。愛知県三河湾の最奥部に位置する汐川干潟は,水鳥の渡来地として全国的に重要な地域であり,1972年以降,東三河野鳥同好会を中心に継続して鳥類調査が行われている。演者らはこの調査の1977年から2004年の28年間の結果を分析し,シギ・チドリ類の種および出現期別の長期変動傾向を明らかにした。調査は双眼鏡と望遠鏡を用いて,干潟(280ha)および隣接する後背地(444ha)の全域を対象に,干潟では総計554回,後背地では497回の個体数調査を行った。調査の結果,干潟では年間平均出現数は調査期間を通じて1000個体以上であり,ハマシギが優占していた。一方,後背地では年間平均出現数が300個体を越えることはなかった。1981年まではタカブシギ,ムナグロ,トウネンが優占していたが,それ以降は1991年を除き,ケリが優占していた。調査では58種のシギ・チドリ類が確認されたが,このうち総個体数が1000個体を越える21種を年変動分析の対象とした。対象種は出現時期を抽出し,出現時期別の年平均個体数を算出した。年変動の増減傾向の検定には,スピアマンの順位相関係数を使用した。干潟に主に飛来する種は,秋群では調査期間を通じて有意に減少している種が多かった。春群では減少した種がある一方で,増加した種もあった。また,同種内でも出現時期により増減傾向の異なるものがあった。後背地に主に飛来する種では,春群も秋群も有意に減少した種が多く,ウズラシギ,ツルシギ,タカブシギは特に減少率が高かった。一方,ケリやタゲリは増加していた。