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一般講演 A3-06

九州・阿蘇の草原における立地条件および諸管理が植物の種組成に及ぼす効果

小路 敦(九州沖縄農業研究センター)

九州・阿蘇地域で開始された「阿蘇草原再生」の取り組みでは、絶滅危惧植物の保全や多様性に富む草原植生の維持に向けた様々な活動が行われているが、効果的な実施には、草原の立地条件や管理条件と、おのおのの植物の種の分布との関連を解明することが不可欠である。

演者は、環境省からの委託を受け、阿蘇地域の草原238カ所において調査を行い、立地条件(表層土壌の物理性(硬度、三相、透水性、保水性、通気性)・化学性(pH、EC)、傾斜の有無、地域)および諸管理(火入れ・放牧・採草)が植物の種組成に及ぼす効果を検討した。

出現確率を目的変数とする多変量ロジスティック回帰分析(ステップワイズ法により変数選択)の結果、出現した224種のうち127種について有意(5%水準)な回帰式が得られた。これらのうち、火入れ、放牧、採草に対して正(負)に応答している種は、それぞれ15(6)種、13(6)種、47(5)種であり、出現種に富む植生の維持には採草が有効であるという通説を裏付けた形となった。ただ、採草に対しては数種の外来植物も正に応答し、採草時期によっては絶滅危惧種の開花・結実に致命的な影響を与えるため、注意が必要と考えられる。また、放牧に対しては、蔓性や有刺性の種が正に応答しており、採食耐性を有する特定の種が優占する懸念がある。

立地条件についても、各要因に対して多くの種が様々な応答を呈していた。土壌硬度の増大や透水性の低下に対してそれぞれ24(9)種、16(5)種が正(負)に応答していたことから、適度な草原利用による土壌の緻密化は出現種数の増大に貢献すると考えられた。また、pH、ECについては、正・負双方の応答を示す種がほぼ同数となった。今後、種組成と環境要因との関連解析を深めるため、2007年度より開始予定の研究プロジェクトで取得予定のデータともあわせ、さらなる解析を行う予定である。

日本生態学会