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一般講演 B1-01
地球温暖化に対する陸上生態系の応答を実験的に解析する一環として、筑波大学陸域環境研究センターに建設された温度勾配型ビニールハウス(TGC)とCO2・温度勾配型ビニールハウス(CTGC)内に於いて、日本の暖温帯の照葉樹林を構成するシラカシ、アカガシ、スダジイと、冷温帯の夏緑樹林を構成するブナ、ミズナラ、コナラの稚樹を栽培して、成長やフェノロジー、光合成・蒸散速度、年輪・導管形成に与える気温上昇とCO2濃度増加の影響を生理生態学的に解析した。TGCとCTGCの入り口に外気温・外気CO2濃度区(Control)を設置して対照とするとともに、TGC内に外気温+3℃昇温区、+5℃昇温区を、CTGC内に3℃昇温・1.6倍CO2濃度区(CT3)、5℃昇温・2.0倍CO2濃度区(CT5)の計5処理区を設け、さらに、ハウス外に1処理区を設置した。各処理区に各樹種の2年生稚樹を12個体程度設置し、2001年2月から14ヶ月間栽培した。
照葉樹3種のCT5区における栽培終了時のバイオマスは、Control区に対して32〜64%有意に増加し、年間の相対生長速度(6.0〜9.4 mg/g/d)が高い樹種ほど、昇温+CO2濃度増加の効果が高く現れた。
夏緑樹のコナラとミズナラのCT5区における処理終了時のバイオマスも、Control区に対して、それぞれ、44%、77%有意に増加し、ブナではCT3区のバイオマスがControl区の115%まで有意に増加した。しかしながら、夏緑樹では、照葉樹とは対照的に、相対生長速度(2.8〜7.5 mg/g/d)が低い樹種ほど、昇温+CO2濃度増加の効果が高く現れた。また、5℃の昇温により、夏緑樹の春の展葉開始は20日程度早まると共に、秋の紅葉開始も10日程度遅れた。