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一般講演 B1-06

葉の表皮と葉肉組織の力学的役割 ー新測定法の紹介と応用例ー

*小野田雄介(ユトレヒト大),Feike Schieving(ユトレヒト大),Niels PR Anten(ユトレヒト大)

多くの葉は水平に配置され、受光率の増加に貢献している。しかしその一方で、そのような水平構造は重力によるモーメントを最大化させる。したがって、水平構造を維持するのに十分な硬さ(剛性)が必要である。葉身(ラミナ)の構造は、硬い表面材(表皮組織)と柔らかな芯材(葉肉組織)に大別される。このような構造はサンドイッチ構造と呼ばれ、軽量かつ高い曲げ剛性を可能にする(例、飛行機の翼)。本研究では、ラミナの構造をサンドイッチ構造と捉え、表皮組織と葉肉組織がどれほどの剛性をもつかを調べた。

本研究では、表皮と葉肉組織を分離することなく、それぞれの組織の剛性を測定する新しい方法を開発した。ラミナの剛性(通常ヤング率として評価される)は引っ張り試験と曲げ試験の両方によって測定することができる。もし測定材料が均一であれば、2つの試験から求まるヤング率は同じである。しかしラミナはサンドイッチ構造をもっており、曲げ試験から求められるヤング率は引っ張り試験から求められるヤング率より大きい。この点に注目し、2つの試験結果と葉の解剖学的構造を解析することによって、表皮と葉肉組織のヤング率を別々に評価した。

15種の草本、12種の落葉樹、10種の常緑樹の葉に対して、この手法を適用した。草本、落葉樹、常緑樹の表皮のヤング率の平均値はそれぞれ70, 140, 290 MPaであった。また葉肉組織のヤング率はそれぞれ-4, 5, 1 MPaであった。つまり、ラミナの剛性のほとんどは表皮によって決定されており、ラミナは理想的なサンドイッチ構造(曲げ剛性を最大化させる構造)であることを意味する。発表では詳しい解析方法、解析結果について紹介する。

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