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一般講演 B1-07

葉群エルゴード仮説ー個葉から群落光合成へ

*菊沢喜八郎(石川県大),八木誠,大音雄司(京大生態研センター),梅木清(千葉大園芸)

群落総生産(GPP)は葉1枚の生涯光合成速度と年間葉生産の積で表される(Kikuzawa & Lechowicz 2006)。生涯光合成速度は最大光合成速度と平均労働時間(Kikuzawa et al 2004)および機能的葉寿命(Kikuzawa & Lechowicz 2006)の積で与えられる。ではどのような葉を選んでその最大光合成速度を調べれば、群落全体を代表することができるであろうか?

1枚の葉はシュートの上端部で開葉し、生涯その位置を移動しない。しかし、時間とともにその上に新しい葉が開葉するために、その周囲の光環境は変化する。これを例えれば、葉が時間とともに群落内部の暗い方向へ移動しているとみなすことができる。そこで我々は、葉の光合成速度の時間平均(同じ葉を異なる時期に何度も測定して平均したもの)は空間平均(同じシュートの異なる高さに位置する葉について平均したもの)と等しいと考え、これを葉群エルゴード仮説と呼ぶことにした。

上の仮説をキクイモ群落について検証した。シュートの上端に展開した葉を時間的に追跡調査し、光合成速度の時間平均を求めた。また展開時にそのシュートにすでに展開していた全ての葉の光合成速度の平均値を求め、空間平均とした。植栽密度のそれぞれ異なる3本の個体で、各個体6-9枚の葉について光合成速度の時間平均と空間平均を比較した。個体内では時間平均と空間平均は有意に異ならなかった。平均光合成速度は個体間ではそれぞれ有意に異なった。これらの結果は上記仮説を支持していた。

日本生態学会