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一般講演 B1-08
樹木は、資源を浪費することなく光合成・蒸散・樹体支持などの機能を維持するため、幹・枝の太さを適切に決定しなければならない。本研究では、シラカンバ稚樹の当年〜4年生の長枝シュート(一成長期間に伸長した長枝。以下、単にシュートとする)の基部直径を、シュート・一次枝・個体レベルの環境・構造要因とともに測定した。このデータを用いて、シュート直径とこれら要因との関係を解析し、シラカンバのシュートの直径がどのように決定されているかを検討した。
測定対象のシラカンバ稚樹は、北海道大学中川研究林内の林道脇の大ギャップとその周囲の林縁で49個体選択した。測定対象稚樹のすべての一次枝先端で展葉終了後に全天写真をとり、一次枝の光強度を算出した。落葉後に一次枝先端・基部の3次元座標を計測した。また、測定対象稚樹の地上部を刈取り、室内ですべてのシュートの直径・長さ・葉数・短枝数を計測した。シュートを齢(当年〜4年生)ごとに分け、シュートの基部直径と、シュート長・シュートの発生位置・積算葉数(子・孫シュートなども含め直径を測定した部分より先についている葉の合計数)・一次枝の光強度・一次枝の高さ・一次枝の角度・個体内の最大光強度などとの関係を解析した。
シュートが発生した当年に直径はシュート長と強い直線的関係を持っていたが、齢が進むにつれてシュートの直径と長さの関係は弱くなった。一方、積算葉数とシュート直径との関係は、齢が進むにつれて強くなった。また、シュートが発生した当年には、シュート直径に対する光強度の影響が見られたが、その後この効果は弱くなった。齢の進行に伴うシュート直径決定要因の変化は、シュートの役割が光獲得から子・孫シュートへの通導へと変化することに対応していると考えられる。