| 要旨トップ | ESJ54 一般講演一覧 | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨


一般講演 B3-07

洪水撹乱後の那賀川河口砂州における塩生湿地植物の再侵入

*内八重(徳島大・院・工),鎌田(徳島大・院・工)

徳島県那賀川の河口汽水域の砂州上には、ハママツナ、ハマサジ、ウラギク等の絶滅危惧の塩生湿地植物が生育している。それら植物は2002年には比較的規模の大きな群落を形成していたが、2004年の大出水によりほとんどが消失し、また砂州の地形や底質環境が激変した。本研究では、新たな立地環境において、これら3種の植物が再侵入可能な領域を推定するモデルを構築した上で、2006年にモニタリングを行い、精度検証を行なった。

再侵入可能領域は次のように推定した。すなわち、2002年における群落の分布とその立地環境との対応関係を把握し、選好度および二進木法を用いて潜在生育地を推定するためのモデルを構築し、それを用いて変化後の砂州上での再侵入可能域図を作成した。選好度では、3つの群落とも底質が細礫・中礫の領域に高い選好性を示し、標高ではハママツナ群落が0.785〜1.063mおよび1.348〜1.619m、ハマサジ群落が0.785〜1.619m、ウラギク群落が1.063〜1.619mの領域に高い選好性を示した。二進木法では、ハママツナ群落、ハマサジ群落の生育可能領域は標高のみで選別され、その範囲は両者とも0.785〜1.063mであった。ウラギク群落の生育可能領域は標高が1.341〜1.619mで、かつ底質が細礫・中礫の立地であった。

今後、より詳細な解析・検討が必要であるが、2つのモデルを用いて推定された再侵入可能領域は、どちらも、これら植物が実際に再侵入した領域とおおよそ一致した。こうしたモデルの構築は、絶滅の危機に瀕するこれら植物のハビタットの修復・再生を検討する上で、有効なものとなり得ると考えられる。

日本生態学会