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一般講演 B3-09

南九州におけるスダジイとツブラジイおよび雑種の分布パターン

小林悟志(情・シ研究機構)

日本のシイ属の分布は一般的に海岸部がスダジイで内陸部がツブラジイとされている。しかし、瀬戸内海沿にはツブラジイが分布し、九州の内陸部にあたる水俣IBPでは標高500mを超えるエリアにスダジイが分布している。また、スダジイやツブラジイの中間型である雑種個体も存在している。この中間型についてはスダジイとツブラジイを別種とするか種内変異とするかで研究者の見解は異なる。本研究では、スダジイとツブラジイおよび雑種の分布パターンを明らかにするために、天然林や天然性二次林が存在する南九州地方の海岸部と内陸部の主なエリアに分布するシイ個体群について、位置関係(標高と海岸部から距離)に着目して分布調査を行った。ツブラジイとスダジイおよび雑種の判別については葉の表皮組織の断面の層数を基準にした。その結果、内陸部については、標高600m以上の霧島ではスダジイのみが分布し、内陸部でも標高が低い(標高200m)溝辺町ではツブラジイが分布していた。また、海岸部で大隅半島の南端に位置する稲尾岳(標高959m)では、シイの垂直分布の上限(914m)にはスダジイが分布しており、山頂から海側の斜面ではツブラジイは存在しておらず、その反対斜面では標高が低くなると雑種やツブラジイがスダジイに混じって存在していた。さらに、稲尾岳よりも内陸部に当たる河川沿いのエリアではツブラジイの個体数が多い傾向を示した。一方で、河川の無い鹿児島半島最南端の開聞岳ではツブラジイの分布は確認出来ず、雑種個体がわずかに存在しており、そのほとんどがスダジイであった。南九州の分布パターンは、スダジイは海岸部と内陸であっても標高の高いエリア分布し、ツブラジイは内陸部の標高の低いところに分布するが、河川が存在するエリアでは標高の高い所(658m)にも分布する傾向を示し、雑種の垂直分布の上限はツブラジイよりも高くスダジイよりも低いことが示された。

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