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一般講演 B3-10
食物網内の生物種は、捕食をはじめとする栄養関係によってつながっている。栄養関係の検出には、密度の負の相関が用いられることが多い。対になって見られる個体群サイクルもまた、二つの個体群間に栄養関係が存在することを強く示唆するものと考えられてきた。しかし、迅速な進化が個体群動態を変化させるなら、このような解析方法では栄養関係が見過ごされる可能性がある。本講演では、実際に強い相互作用を持つことがわかっている2つの個体群が、まるで栄養関係がないかのような振る舞いを見せる事例を紹介する。本研究で用いた藻類―ワムシ系とバクテリアーファージ系では、捕食者の密度が大きく変動するにも関わらず、餌生物の密度はほぼ一定に留まるという奇妙な個体群動態が観測された。一方、餌生物の遺伝的組成は変化し、餌生物の平均形質と捕食者密度との間には対になった個体群サイクルが存在することが示唆された。本結果は、迅速に進化する個体群は「隠れた個体群動態」を見せることがあり、その場合、実際には存在する強い栄養関係が無いものと判断されてしまう可能性があることを示している。