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一般講演 C1-02

生きものの生息場所としての畑管理

*藤田正雄(自然農法セ・農試)・藤山静雄(信大・理)

慣行となった近代化農業は、地力や病害虫の発生状況が、谷一筋、田畑一枚の違いによって微妙に変わるにもかかわらず、化学肥料・農薬・大型機械などを用いた画一的な技術で対応してきた。しかし、土壌の母材、地形、気象条件などが異なれば、栽培環境が異なるのは当然のことである。すなわち、農地で起こる状況の変化に応じて、それぞれに適合した管理を行うには、それなりの工夫が必要である。

畑地には、ミミズ類、クモ類、ヤスデ類、ムカデ類、甲虫類(オサムシ類、コガネムシ類、コメツキムシ類、ハネカクシ類など)などの大型土壌動物がみられる。これらの動物(野生生物)は、それぞれ特有の餌や生息場所がなければ生きてゆけない。すなわち、栽培管理の違いによって、動物の種数や生息数に違いがみられる。とくに、耕耘による作土の撹乱は、表層土壌の階層構造を破壊し、土壌動物の種数や生息数を大きく減少させる。

化学肥料や農薬を用いない自然農法や有機農業などの環境の保全に配慮した農業を行うには、作物以外の動植物を排除する管理から共存・共生をすすめる管理への転換が必要である。さらに、生きものの力を食料生産に利用するには、食料生産の場としての農地のあり方に加えて、周りの環境との関係を考慮した生態系としての農地の捉え方が必要となる。

ここでは、耕起法、肥料の種類、緑肥間作の導入などの異なる栽培管理を継続して得られた結果をもとに、畑地を食料生産の場としてだけでなく、生きものの生息場所としての意義について言及する。

日本生態学会