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一般講演 C1-03
背景:生態系に調和した環境保全型農業が奨励される中で、ゴミムシやクモ類など地表徘徊性節足動物相への関心が高まっている。また、海外では除草剤耐性遺伝子組換え作物の普及とともに、非選択性除草剤散布が非標的の土壌棲息性昆虫相に及ぼす影響について注目され、除草管理法の違い(非選択性除草剤散布と従来の耕耘除草)の観点から評価されている。一方、日本では農耕地の環境保全の観点から、主に殺虫剤散布の有無によって評価されることが多く、除草剤の影響も考慮した研究はまだ十分ではない。
方法:スィートコーン圃場において、除草剤(アトラジン)と殺虫剤(有機リン・合成ピレスロイド混合剤)散布が圃場内の土壌棲息性昆虫の発生量に及ぼす影響をピットフォールトラップによって調査した。殺虫剤は雄穂出穂期から収穫1週間前までの3回、除草剤は播種1月後(出穂前)に1回散布した(アトラジンはイネ科以外の雑草に高い除草効果を示す)。
結果:トラップに捕獲された種の中で、大形の肉食性ゴミムシはナガヒョウタンゴミムシ、キボシアオ・オオアトボシアオゴミムシ、セアカヒラタゴミムシが多く、それぞれ発生ピークが異なっていた。ハサミムシはオオハサミムシ1種が記録された。除草剤を散布せず、殺虫剤のみ散布した実験では、殺虫剤散布区は無散布区に比べて肉食性ゴミムシ類が有意に減少したが、ハサミムシははっきりした影響をうけなかった。除草剤と殺虫剤を散布した実験では(二元配置)、肉食性ゴミムシ類は除草剤散布区で有意に減少し、殺虫剤散布による相互作用も減少に影響していた。クモ類は殺虫剤散布区で有意に減少し、除草剤散布の影響は見られなかった。ハサミムシ類では殺虫剤、除草剤散布によるはっきりした影響は認められなかった。