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一般講演 C1-05

地下工事による土壌水分の変化が植物へ及ぼす影響

*大西智佳(岡山大・院・環境学),西垣誠(岡山大・環境学)

地下工事による地下水環境の変化に関する報告は多く,地下水環境の変化に伴う植物への影響が懸念されている.

本研究では,地下工事により植物(カツラ,クロマツ等の高木)が枯死・衰弱したという事例を基に,枯死・衰弱地点の土壌水分の変動に着目し,植物への影響について考察した.

土壌水分は,工事区域の下流側の5地点,5深度(GL-10,30,50,70,90cm)で工事開始後約700日間テンシオメータによって計測された.植物への影響は,水ポテンシャルが毛管連絡切断点(-0.049Mpa≒pF2.7)未満となった日数の割合をストレスの尺度として用い,樹木が枯損・衰弱した1地点(以降No.2地点)と他の4地点とを比較した.

日数の割合は,浅い方から順に,No.2地点では17%,16%,11%,9%,10%,他地点では0〜14%,0〜6%,0〜8%,0〜1%,0%であり,全深度でNo.2地点での割合が高かった.

また,水ポテンシャルが毛管連絡切断点未満になった場合の連続日数や合計日数,低下速度は,深度が深くなるにつれて減少する傾向にあるが,No.2地点では下層での連続日数が上層よりも長く,合計日数の減少が緩やかであり,低下速度が全深度で同程度であるという特徴が見られた.

各地点の4深度で求めた体積含水率では,No.2地点は3深度で全地点の中間的な値を示したが,細粒土の割合が比較的高いために,体積含水率が中間的な値であっても水ポテンシャルが低く,植物へのストレスが最も強くなったものと考えられる.

調査地周辺で工事前から実施された地下水位の観測結果より,No.2地点では工事により地下水位が最も低下したと推定され,地下工事による土壌水分の変化が,植物を枯死.衰弱させた要因の1つである可能性が示唆された.

日本生態学会