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一般講演 C1-06
近年,西日本各地の里山地域でモウソウチクなどタケ類が放置され自然に分布を拡大し,周囲の森林や耕作地に侵入する現象が顕著である。竹林の拡大は,造林木や農作物への直接的な被害のほか,森林の多面的(公益的)機能に影響を与えると推察されているにもかかわらず,これまでその実態をほとんど把握できていない。とくに問題視されている事柄の一つは,竹林の拡大が森林の水保全機能にどう影響するのかという点である。
本研究では,まず高知市内の丘陵地において,竹林(モウソウチク)とそれに隣接するスギ林で表層土壌の水湿状態を通年的に測定し,土壌の水湿状態の違いを検討した。その結果,竹林ではスギ林に比べて測定ポイント毎のばらつきが大きいが,全般的には表層土壌の含水率が低いことが明らかになった。この傾向は,ヒノキ林や広葉樹林など諸種の林分との比較結果(多点における簡易測定)でも同様で,竹林は他の林相の林分に比べて含水率が低い傾向があった。また,必ずしも明確な傾向ではないが,竹林は他の林相の林分に比べて,表層土壌の堅密度の値がやや大きかった。竹林とスギ林の表層土壌の孔隙解析結果(400ml採土円筒試料)では,竹林には根が多いこと,粗孔隙が多く最小容気量が大きいことが明らかになった。それは,竹林ではタケノコや地下茎の発生/消失が繰り返されるため,土壌表層に粗大な空隙が生じるためではないかと推察した。また,竹林では撥水性が強く発現していたが,スギ林ではほとんど撥水性は認められなかった。さらに,竹林では地表面浸透能が低かった。
以上の結果をまとめると,竹林の表層土壌は根が密生して堅く締まっており,また撥水性が強いために地表面浸透能が低くなり,他の林相の林分に比べて乾燥傾向にあるものと考えられた。