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一般講演 C1-07
北海道の勇払低地を流れる美々川では、近年、その上流部で過剰な栄養塩負荷や流量の減少が観測されている。本研究では、美々川に成立する水生植物群集を対象に種組成に着目した分類を行い、栄養塩負荷や流量減少が各群集に及ぼす影響について解析した。調査は115箇所に1×1m2の調査区を設定し、植物の被度、水深、河床材料、泥厚、流速、RPPFD、水温、DO、pH、EC、SS、T-N、T-P、NO3-N、NO2-N、各種イオンについて計測・分析した。
TWINSPANによる第3階層までの区分により、美々川の植生タイプは5つに分割された。第1階層での分割は最も高い固有値を示し、下流部に分布する2つのエゾミクリ群落と、上流部に分布するスギナモ、クサヨシ、バイカモの3群落が分離された。ANOVAおよびCCAの結果、下流部の2群落は高水温で栄養塩が少ないことで特徴づけられたが、上流部の3群落は、低水温で高濃度の栄養塩が負荷される特殊な環境下に成立した。この上流部の各群落の特性について明らかにするため、上流部のみを対象とした解析を行なった結果、各群落はそれぞれ以下の要因によって特徴づけられた。(1)スギナモ群落:流速が遅く河床の粒径が小さい。またT-N、NO3-N、Cl-、SO42-が豊富、(2)クサヨシ群落:高RPPFD、低DOでT-P、SS、Org-N、HCO3-が豊富、(3)バイカモ群落:流速が速く河床の粒径が大きい。
以上の結果から、高濃度の栄養塩負荷下において、スギナモ群落は流れが緩慢で河床に泥が堆積する箇所に成立し、流速の低下によりバイカモ群落から移行していくことが推察された。また近年、上流部で確認されているクサヨシ群落の拡大要因のひとつとして、過剰なT-PおよびSSの負荷があげられた。