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一般講演 C1-10

釧路湿原達古武沼における底生動物の分布と分布決定要因

*高村典子,上野隆平,中川惠(国環研),伊藤富子,大高明史,桑原康裕,蛭田眞一,若菜勇,上野洋一,仲島広嗣

達古武沼は北海道釧路湿原東部に位置する海跡湖で、1970年代には湖面一面がヒルムシロ属やネムロコウホネに覆われていた。しかし、1996年から2000年の間に湖水のクロロフィルa濃度が急激に上昇し、水生植物種数の減少が指摘されている。現在の達古武沼は、大部分は開水面であるが、沿岸や沼南にヒシ群落が広がり、ネムロコウホネや沈水植物群落がパッチ状に残存している。集水域の特質から本沼はpH、無機炭素濃度、栄養塩濃度などの水質に明確な南北の環境傾度がある。本研究は、現在の達古武沼の底生無脊椎動物の群集構成と沼内の環境因子の関係を明確にすることを目的として実施した。注目した環境因子は、流入河川からの距離、水生植物群落の種類と種数、底泥粒子サイズと有機物含量、底層の酸素濃度、捕食者と考えられる底生魚の数、pHや栄養塩などの水質、計25変数である。

調査は2003年7月23〜25日に25地点にて行ない、49分類群の底生動物を得た。1地点のみから採集された12分類群と複数の種類を含む8分類群を除外した29分類群の密度データを用い除歪対応分析を行なった。第1軸のプラス側には多くのユスリカ類が、マイナス側にはイトミミズ亜科の3種とニホンミズシタダミが分布した。第1軸とは11変数が有意な相関を示したが、中でも水生植物の種数と現存量のτの絶対値が最も高く、水生植物が底生動物種の分布に重要な因子であることが示された。第2軸では湖底の溶存酸素濃度や底泥の有機物含量と関係があった。各地点で採集された無脊椎底生動物群集の種数は測定された25環境変数の中では、沈水植物の種数(r=0.51)と浮葉植物の現存量(r=0.40)と有意な正の相関を示した。

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