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一般講演 C1-12
今日、河川生態系の健全性の把握には、詳細な生物・水質調査から総合的に判断するしかない。そこで、本研究では生態系内のエネルギー効率に基づく新たな河川生態環境評価法を開発する。生態学の分野で古くから生態系の中でのエネルギーの流れに着目して研究がなされてきた。生態系を理解するに当たって、生態系内のエネルギーの流れを捉えることは本質的であり,生態系の健全性を評価する上で最も有効であると考えられる。本研究では河川生態系において生物の生息環境を規定する出水による攪乱が起こってから生態系が十分に回復するまでをエネルギーの収支を考える単位として、供給されたエネルギーに対して生態系内で生成されたエネルギーの割合を表わすエネルギーの利用効率を算出し、生態系の健全性の評価指標として用いる。河川生態系について具体的に考えると、出水によって河床に供給された有機物、平水時に河床に供給される有機物および太陽からの光エネルギーによって、河川生態系内の生物が成長すると考えて、供給される有機物・光エネルギーに対する生態系が十分に回復した段階での生態系内での有機物(付着藻類、水生昆虫、魚類、河床に堆積する有機物)の割合をエネルギー効率と定義することができる。さらに、本研究では従来のエネルギーという量だけの考え方ではなくエネルギーの質と量を示すエクセルギー(生物にとって有効なエネルギーであり、生態系上位のものほど高い値をとる)に着目し、上記のエネルギーの考え方と同様にして、エクセルギー効率を定義する。生物の現存量が多く、質の高いエクセルギーをもつ魚類や水生昆虫が多いほど系内が高いエクセルギーの状態にあり、エクセルギー効率の高い健全な生態系であるといえる。それに対して、付着藻類の異常繁茂や有機物の堆積が顕著である場合には系内が低いエクセルギー状態にあり,エクセルギー効率が低く、生態系が不健全であると考えられる。