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一般講演 C3-04

小笠原諸島におけるグリーンアノール防除の方針と効率的な捕獲方法

*戸田光彦,中川直美,鋤柄直純(自然環境研究センター)

外来爬虫類グリーンアノールAnolis carolinensisは小笠原諸島に定着しており、捕食によって昆虫群集に大きな影響を与えてきた。本種は2005年6月に外来生物法により特定外来生物に指定され、環境省によってその防除が進められることとなった。小笠原諸島における本種の防除の方針として、次の2点が重要であると考えられた。

第一に、現在はまだ本種が侵入しておらず、在来昆虫群集が維持されている島嶼への拡散(船による非意図的な持ち込み)を防止することが必要である。これらの島に向かう船のほとんどは父島・二見港から出発しているため、港湾周辺のアノールの密度低下を図り、船や関連資材にアノールを混入させないことが求められている。

第二に、本種が定着しているが固有昆虫がまだ残存している地域で本種を排除し、昆虫群集の再生を通した自然再生を図ることが必要である。母島は父島に比べて本種の侵入が約20年間遅く、地域によっては固有昆虫が残存している。よって、母島の一部地域で本種を完全排除し、在来昆虫の生息状況を回復させることが求められている。

これらの防除において、本種を効率的に排除するための手法確立が最も重要な課題である。これまでの野外調査によって、樹上性である本種の行動圏はさほど広くないものの、樹冠と地上を頻繁に行き来していることが示唆された。そこで樹幹に粘着トラップを設置して捕獲する方法を考案し、現地でその効果を測定するための試験を継続してきた。この方法は有効であり、本種の活動期には数日間のトラップ設置で生息個体の50%以上を除くことが可能であった。合わせて、周囲から排除区への侵入を防除するためのフェンスの試験も継続している。

なお、これらの調査は地球環境研究総合推進費及び小笠原地域自然再生推進計画調査の一環として行われている。

日本生態学会