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一般講演 C3-06

外来生物の防除における重点対策地域の選定〜外国産ヒラタクワガタを例に〜

*郡 麻里, 五箇公一(国立環境研)

1999年の植物防疫法の規制緩和以来、我が国には大量の外来生物がペットとして輸入され続けている。特に子供から大人まで幅広い年齢層に人気の高い外国産クワガタムシ・カブトムシ類は年々輸入許可種が追加され、その数は2006年現在では約750種に上る。毎年百万匹以上という輸入量の多さ、飼育・増殖人口の密度の高さから、外来種の野外逸出は意図的・非意図的を問わず避けられないと考えられる。外来種による生態影響として遺伝的侵食がまず懸念される。種間交雑実験(Goka et al. 2004)では商品流通量の特に多いスマトラオオヒラタクワガタと日本産ヒラタクワガタとの間に健全なF3雑種まで成立することが確認され、実際に日本国内で採集されたヒラタクワガタからは外国産系統の遺伝子を持つ個体が検出されている。その他、外来種による生態系への影響として、在来種との競合や寄生生物の持ち込みの可能性も指摘されている。これらの生態リスクから在来種を保全する上で、外来種の分布拡大を事前に予測し、対策を立てる必要がある。我が国には11の亜種からなるヒラタクワガタが生息しており、mtDNAによる系統解析(Goka et al. 2004)においても島固有の系統分化が認められ、その地域固有性を保全する意義は大きい。本研究では、外国産ヒラタクワガタの野外における定着リスクを評価することを目的として、在来種・外来種の分布情報や生息環境に関するデータベースを地理情報システム上に構築し、それを基に成虫や幼虫の利用する樹種の空間的分布を環境省自然環境保全基礎調査の成果等を活用して類型化し、潜在的生息可能域を図示することで、外来種の重点的対策エリアの設定を試みた。

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