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一般講演 C3-08

体内寄生性マルハナバチポリプダニの生態と潜在的感染力

*米田昌浩(国立環境研),古田春樹,土田浩治(岐阜大・応用生物),岡部貴美子(森総研),五箇公一(国立環境研)

マルハナバチポリプダニLocustacarus buchneriは汎世界的に分布し,マルハナバチの気嚢(Air Sac)に寄生する.このダニは1998〜1999年にかけてヨーロッパから輸入されたセイヨウオオマルハナバチBombus terrestrisの体内で発見され,商品に随伴して日本に持ち込まれている.1999年には,このダニが野外の在来マルハナバチからも発見されたことから,商品マルハナバチの逸出による野生マルハナバチ個体群へのダニの感染拡大が懸念される.

本研究ではダニの分布拡大プロセスを明らかにすることを目指して,マルハナバチのコロニー内において個体間をどのように移動していくかを調査した.分散ステージのダニは,ハチ成虫の中胸後部にある気門開口部から体外へ移動し,巣内で養育されている老齢幼虫の気門周辺で待機した後,ハチが蛹期に入った時点で,体内へ侵入すると考えられた.次に,ハチ体内でのダニの増殖力を評価するために, 1)ダニの感染部位,2)ダニメスあたりの産子数,および3)ワーカー1個体あたりのダニ産出数を調査した.その結果,ダニは,ハチ成虫の腹部気嚢内で繁殖し,ダニ1メスあたりの産子数は平均24頭であった.また,ワーカー1個体から平均76頭のダニが産出された.そして,商品1コロニー内における平均総数160個体のハチ成虫のうち約90%にダニが寄生していたことから,感染コロニー1群からは1万頭以上のダニが産出可能と考えられた.

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