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一般講演 C3-09
野生化したセイヨウオオマルハナバチが在来植物エゾエンゴサク(ケシ科)の繁殖成功に与える影響を明らかにすることを目的とした.セイヨウオオマルハナバチの野生化が確認されている北海道沙流郡平取町周辺の3集団5パッチにおいて,1)エゾエンゴサクの訪花昆虫,2)マルハナバチの訪花頻度,2)マルハナバチの一回訪花による結果率・結実率,3)自然受粉による結果率・結実率を調査した.
1)主に観察されたマルハナバチは,セイヨウ,エゾコマル,エゾオオマルであった.セイヨウとエゾオオマルは盗蜜訪花,エゾコマルは適法訪花であった.
2)観察されたマルハナバチ種と訪花頻度は,パッチ間で違いが見られた.訪花頻度について,マルハナバチ種間の相互作用を調べたところ,セイヨウとエゾオオマルの訪花は,エゾコマルの訪花頻度に影響を与えていた.
3)一回訪花による結果率(果実数/花)と一回訪花によって成熟した果実の結実率(種子数/胚珠数)は,在来種エゾコマルがセイヨウよりも有意に高かった.在来種エゾオオマルとセイヨウは同程度であった.よって,エゾコマルの適法訪花による受粉効果は高く,セイヨウとエゾオオマルの盗蜜訪花では低いことが明らかとなった.
4)自然受粉による結果率と結実率ともに,パッチ間で違いがみられた.種子生産の低かったパッチは,セイヨウとエゾオオマルの訪花頻度が高いパッチであった.
以上の結果より,自然受粉の種子生産が低くなった要因は,盗蜜訪花による受粉効果が低いことと,盗蜜をするマルハナバチが適法訪花をするエゾコマルの訪花頻度に影響を与えていたことが考えられる.よってセイヨウの野生化は,エゾエンゴサクの有効な受粉機会を減少させ,その結果,種子生産量の減少をもたらすと予想される.