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一般講演 C3-10
現在、穀物の輸出入に伴い、様々な雑草種子が穀物に混入し、国境をこえて移動している。こうして持ち込まれた外来雑草のいくつかが、移入先の生態系および人間生活に深刻な問題を引き起こしている。その効果的な制御のためには、混入する可能性の高い種に共通する特性を明らかにする必要がある。本研究では、日本に輸入されたカナダ産食用コムギを対象に、コムギ中に混入する雑草種子量を調査し、混入しやすい雑草タイプの特定を行った。畑に多い雑草種が穀物とともに刈り取られ混入しやすいと考えられるが、それ以外にも輸出に至るまでに行われる様々な過程(収穫、脱穀、クリーニングなど)が種構成に影響を与えていると考えられる。そこで、畑での被度の他、収穫過程やクリーニング過程で混入に関与すると考えられる生態学的特性(植生高、種子サイズ、冠毛の有無など)が混入量に与える影響を重回帰分析によって評価した。解析から示唆された持ち込まれやすい雑草タイプは、畑に多く、草丈が高く、冠毛のつかない種子を生産するタイプである。植生高の低いタイプ、冠毛つきの種子をつけるタイプは、収穫からクリーニングに至る過程で取り除かれやすいと考えられる。また、他の種子作物も多く混入していた。港湾のエレベーターは輸出される全作物共通に使用されるため、他の輸出作物がエレベーター内に残留し、コムギの中に混入しやすくなっていると考えられる。組み換え体の導入、使用される除草剤・作付け体系・耕作方法の変化に伴い、畑に優占する雑草種もまた変化している。従って、十年前はほとんど日本に持ち込まれなかった新たな種が増える可能性がある。侵入しやすい雑草タイプおよび侵略的種となりうる生態学的特性を特定することは、今後ますます重要となるだろう。