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一般講演 D1-02

全国の農業水利施設およびその周辺環境に生育する植物の分布傾向の把握

*徳岡良則,楠本良延,山本勝利

近年,全国各地で外来植物種の侵入,繁茂による在来種の駆逐,在来種との雑種形成,農地や農業用水利施設の管理コストの増加等の問題が顕在化している.このため外来植物が侵入・定着しやすい環境を明らかにするために,現況の植物相を全国レベルで把握する必要がある.こうした中で,農村振興局が平成15年度から平成17年度にかけて,全国の水田地帯の農業用水利施設およびその周辺を対象に,踏査によるフロラ調査を行った.本調査結果は,種別の被度データを持たないため,各種の繁茂実態の把握や量的な推定には適さないが,全国規模で同時期に植物の分布を記録した結果として有益なデータと言える.本研究では,このデータに基づき、全国的な植物種の分布傾向の把握と帰化率や生活形組成と環境要因や立地要因の対応関係の検証を行うことを目的とした.

調査地の帰化率や生活形組成と,調査地に対応する3次メッシュの土地被覆率との対応関係を検討した結果,森林率と帰化率(r =−0.556,p<0.001)および森林率と一,二年生の外来草本種の出現率(r =−0.489,p<0.001)との間には有意な負の相関が見られた.今回の調査で出現した外来種には全天環境下に生育する一,二年生草本が多く含まれ,森林率の増加はこれらの種の生育地を減少させることを示す結果と考えられる.今後,各植物種の在・不在データと土壌分類,地形,気象観測値,土地被覆率,水田整備状況に関するデータ等から,各種の分布に関与する要因を検討したい.

日本生態学会