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一般講演 D1-03

植物社会学と民族生物学の手法を用いた植物群落の総合評価

*矢ヶ崎朋樹(国際生態学センター),鈴木邦雄(横浜国大・院・環境情報),武井幸久(福井工業高等専門学校),平泉直美

はじめに:本研究は、植物群落の保全・管理計画の一助となる評価手法の開発を目的とした方法論研究である。今回の発表では、植物社会学と民族生物学の手法を応用した、植物群落の生態的特性/資源的特性の評価事例について報告する。

対象と方法:福井県鯖江市河和田地区を対象とした。現地では、2003年から2006年にかけて、植物群落の生態的特性を把握するための植物社会学的調査(Braun-Blanquet, 1964に基づく植物群落の記載)および資源的特性(生活との関連性、用途など)を把握するための民族生物学的調査(直接観察、聞き取り調査、アンケート調査、文献調査)を行った。室内では、以上の2つの現地調査で得られた記述的データ(テキストデータ)をそれぞれ「記載文」、「自然資源データベース」にまとめた。さらには、植物群落の保全上注目すべき生態的特性、資源的特性をそれぞれ15項目ずつ(計30項目)規定し、「記載文」、「自然資源データベース」を対象としたテキストマイニングに基づき、特性30項目と関連するテキストの抽出作業(植物群落の特性判定)を行った。

結果および考察:現地調査で認められた73タイプの植物群落を対象に、行タイトルに「植物群落名」、列タイトルに「特性」を配置した「評価マトリックス」を作成し、“特性有り”と判定されたものには「1」を、“特性無し”の場合には「0」の数値を格納した。この結果、これらの数値を基に、多様な特性を備えた植物群落をはじめ、保全すべき特性の集積した空間(いわば、生態的、資源的特性の多様性ホットスポット)を具体的に特定することが出来た。この評価手法の開発を通して、保全すべき多様な特性を考慮した植物群落評価の「たたき台」が構築可能になると考えられた。

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