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一般講演 D1-09

土壌呼吸による温暖化影響の評価

*梁 乃申(国環研),藤沼康実(国環研)

現在、世界の土壌に蓄積されている炭素(2400Gt C)は大気中の炭素(760Gt C)の3倍以上にも相当する。一方、土壌は、土壌呼吸によって大量のCO2を大気中に放出している。これまで多くの陸域生態系において、土壌呼吸速度は土壌温度の上昇とともに指数関数的に増加することが報告されている。Raichら(2002)は25におよぶ文献から、土壌呼吸と温度および降水量との関係式を導き、世界の土壌呼吸量は約80.4Gt C/年と推定している。なお、この数値は化石燃料などの消費による年間CO2放出量(5.5Gt C)の約14.6倍にも相当する量である。また、Jenkinsonら(1991)はモデル計算によって、地表面気温が1度上昇すると、土壌呼吸によって全世界の土壌中の炭素蓄積量は最大33Gt C損失すると推測している。IPCC第三次レポートによれば、地球の平均気温が2100年時点で最大5.8度上昇すると予測されているが、その気温上昇によって、土壌呼吸による炭素蓄積量は約191Gt C損失することになる。この数値は大気中のCO2濃度に換算すると96ppmに相当し、気温は更に1.5度上昇する可能性がある。

以上の研究は、短期の季節変化のデータを用いて地球温暖化に伴う土壌呼吸の長期変動を予測したものであるが、この予測を裏付ける実測データがほとんどなかった。また、生態系によって土壌炭素のプールや存在状態が異なるため、地球温暖化が各生態系の土壌炭素放出に及ぼす影響も異なると考えられる。そこで、本研究は、地球温暖化に対する土壌呼吸のフィードバック効果メカニズムを明らかにすることを目的として、2005年の冬期から国環研構内の針広混交林において温暖化操作実験を行ってきた。本発表は、これまで得られた結果を報告する予定である。

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