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一般講演 D1-12
ロシアの西シベリアに位置するチャニー湖は、浅く広大な内陸性塩水湖である(平均水深2.2m、面積約1700km2)。湖水の塩分は南部の淡水流入部から北端部に向けて上昇するが、その淡水域には多くの魚類が生息している。チャニー湖におけるこれまでの研究により、植物プランクトンを基点とした食物網構造の一部が明らかにされてきた。本研究では、チャニー湖淡水域の調査地点において、雑食性のコイ科魚類と捕食性のパーチ科・パイク科魚類、彼らの餌資源候補を採集して炭素・窒素安定同位体比を測定し、魚類までを含む食物網構造を解明することを試みた。
安定同位体比の測定結果は、魚類の餌資源が種間で大きく異なることを示していた。ヨーロッパブナCarassius carassiusは主に動物プランクトンを餌とし、アムールブナCarassius auratus gibelio、ブリームAbramis bramaおよびコイCyprinus carpioは主に底土や底生動物を、ローチRutilus rutilusは主に底生動物や沈水植物を餌としていることが示唆された。ヨーロピアンパーチPerca fluviatilisおよびノーザンパイクEsox luciusはいずれも他種と比較して高い窒素安定同位体比を示し、魚食者であると考えられた。また、アムールブナとブリームの炭素・窒素安定同位体比はほぼ等しく、彼らが餌を巡る競争関係にあることを示唆していた。