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一般講演 D3-02

個々のトチノキ種子に含まれる二次代謝物質エスシンの定量と、アカネズミによる選択的な摂食

*山元得江(秋田県立大・生資),星崎和彦(秋田県立大・生資),吉澤結子(秋田県立大・生資),木村靖夫(鳥取大・農),小林一三(秋田県立大・生資)

大型のトチノキ種子はアカネズミにとって冬季の重要な餌資源のひとつである。一方、トチノキ種子は二次代謝産物サポニン(主にエスシン類)を含むことで種子捕食から防御的に回避していると思われる。本研究では1)種子ごとにエスシン含有率が異なる、2)捕食者はエスシン含有率の低い餌を選択的に摂食する、という仮説を検証した。

トチノキ種子のエスシン含有率を決定するために、種子0.5gをメタノール抽出後HPLCで定量する手法を確立した。この方法で、岩手県奥州市で採集したトチノキ種子のエスシン含有率を定量した。さらに、アカネズミによる摂食がエスシン依存的であるかを検討するために、2つの飼育実験を行った。(i)アカネズミにトチノキ種子を与え、摂食前後の種子のエスシン、主要成分(タンパク質、脂質、灰分、炭水化物)とエネルギーを比較した。(ii)市販のβ−エスシンを添加した人工餌を、0.5 vs. 1.0%、1.0 vs. 1.5%、1.5 vs. 2.0%の含有率の組み合わせでアカネズミに与えた。

トチノキ種子のエスシン含有率は、種子間(CV 0.28)、母樹間(CV 0.12)とばらついていた。実験(i)では、アカネズミはエスシン、タンパク質、脂質、エネルギーの少ない部位、または灰分、炭水化物の高い部位を有意に多く摂食した。実験(ii)では、1.0 vs. 1.5%、1.5 vs. 2.0%の組み合わせでエスシン含有率の低い人工餌を有意に多く摂食した。以上より、トチノキ種子のエスシン含有率は種子間や母樹間で大きく異なり、アカネズミはエスシン含有率の高い種子を避けて摂食すると思われる。

貯食型の種子散布では、種子の二次代謝物質がこれまで考えられてきた以上に重要であることが示唆される。

日本生態学会