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一般講演 D3-05
Shorea acuminata(フタバガキ科)は東南アジアの低地フタバガキ林に出現する林冠木で、択伐の対象樹種である。熱帯の植物は一般的に他殖性とされ、多くの他殖性植物では近交弱勢が確認されている。択伐に伴う繁殖個体密度の低下は送粉者による隣花受粉の機会を増大させると考えられ、それに伴う自殖率の増加は、近交弱勢を通じて次世代の更新に悪影響を与える可能性がある。したがって択伐による更新過程への影響を予測するためには、まず開花個体密度が繁殖・交配プロセスに与える影響を明らかにする必要がある。本研究では、マレーシア・パソ森林保護区において、周囲の局所開花個体密度が異なる複数の母樹から種子を採取し、種子の父性解析の結果を通じて、局所開花個体密度の違いが自殖率や送粉パターンに与える影響を検討した。
40ha調査区内の母樹及び花粉親候補木計77個体について、Shorea属の他種で開発されたマイクロサテライトマーカー(Ujino et al. 1998; Lee et al. 2004; Lee et al. 2006) を用いた遺伝子型の決定を行なった。その結果、12遺伝子座において得られた対立遺伝子数の平均値は9.25、へテロ接合度の観察値の平均値は0.675であった。これら12座の遺伝子型に基づいて、2001年一斉開花時に採取した成熟種子の花粉親および対象母樹の自殖率を推定し、得られた結果から局所開花個体密度がS. acuminataの交配プロセスに与える影響について議論する。