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一般講演 D3-06
タマノカンアオイ(Heterotropa tamaensis)はウマノスズクサ科カンアオイ属の常緑多年生草本で、多摩地方にのみ生息している。主に落葉広葉樹林の林床に生息していて、受粉はキノコバエをポリネータとした他家受粉を行っている。近年は植生の変化、都市化が原因で生息地、個体数を減らしていて、環境庁のレッドデータブックに絶滅危惧2類として登録されている。タマノカンアオイの種子散布者はアリなどの行動範囲の狭い昆虫であり、一度生息地が縮小してしまうと生息地を拡大することは困難である。本研究ではアズマネザサの除去による光環境の変化がタマノカンアオイの種子生産に及ぼす影響の解明を試みた。東京都八王子市堀之内にある東京薬科大学構内のコナラ林にあるタマノカンアオイの生息地に5m×5mの区画を12個設け、その中の9個の区画で繁茂していたアズマネザサを刈り、光環境を変化させ、光量子量と種子生産数の相関を調べた。種子数は2005年6月21日と2006年6月23日に記録し、光量子量は2005年5月27日〜7月8日までの43日間と2006年5月29日〜7月13日までの46日間の積算光量子量を測定した。測定には、オプトリーフ(O-1D、株式会社大成イーアンドエル製)を用いた。結果として、2005年と2006年ともアズマネザサを刈った区画で光量子量が有意に多かった(p<0.0001)(二元分散分析)。また、両年とも光量子量と種子生産量の間に有意な相関があった(r=0.71、p=0.013;r=0.71、p=0.0067)。このことから、光量子量が種子生産を決定する要因であることが確認された。
よって、アズマネザサを刈ることは種子生産を増加させることになりタマノカンアオイの保全に有用だと示唆された。