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一般講演 D3-09
植物において繁殖ステージの性比には偏りが生じることがしばしば報告されている。性比の偏りは次世代の有性繁殖成功度に影響を与えることがある。集団間で性比の変異が大きければ、集団間で有性繁殖成功度も大きく異なる可能性がある。
雌雄異株植物ヤチヤナギ(ヤマモモ科)を用いて、北海道(湧別湿原、キモントウ沼、別寒辺牛湿原、落石岬、然別湖)および尾瀬において集団の性比を明らかにした。ヤチヤナギは、湿地性の潅木であり、匍匐枝によってクローン繁殖する。性の決定機構は明らかではなく、近縁のセイヨウヤチヤナギでは雌雄の花が花序内に同所することがあると報告されている。1集団につき0.5m*100mのライントランセクトを設置し、トランセクト内に地際がある幹の性および開花の有無を記録し、みかけの性比および開花率、枯死率、幹密度を明らかにした。別寒辺牛湿原は2箇所、尾瀬は4箇所で設置した。別寒辺牛の1箇所は0.5m*400mとし、また、然別湖は0.5m*80mのライントランセクトとした。ライントランセクト内の最大樹高と水深を10mごとに測定した。ただし、尾瀬は調査次期が遅かったため、オスの数を過小評価している可能性がある。
然別集団はオスのみであり、尾瀬1集団、別寒辺牛の2集団、落石岬の1集団はオスに性比が有意に偏っており、キモントウ沼の1集団のみメスに有意に偏っていた。尾瀬の2集団は性比が1:1と有意に異ならなかった。従って、ヤチヤナギの性比はかなり大きな集団間変異をもつことが明らかとなった。この性比の集団間変異は、集団の最大樹高・幹密度・枯死率・生育地の平均水深とは相関が認められなかった。今後、この集団間変異がどのように有性繁殖成功度に影響するのか明らかにする必要がある。