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一般講演 E3-01
農薬や殺虫剤といった人口合成有機物を土壌に与えた場合, 分解菌が急激に増加する. Katsuyama らによるマイクロコズムを用いた実験から, 有機リン系殺虫剤フェニトロチオンの分解菌 Sphingomonas sp. TFEE (以下, TFEE) と, その代謝産物の分解菌 Burkholderia sp. MN1 (以下, MN1) が同定された. これらは単独ではフェニトロチオンを分解出来ないが, TFEE 株による共代謝 (cometabolism) と, MN1 株による代謝副産物の分解による共同作業によって, フェニトロチオンは完全に分解されることが明らかになった.
今回, 実験から同定された2菌株とフェニトロチオン, その代謝副産物の時間的変化を記述する数理モデルを構築し, 微生物の共生的分解について考察した. 数理モデルの解析から, フェニトロチオン分解の可否は代謝副産物の初期濃度に依存することがわかった. 代謝副産物の初期濃度が低いと分解は起こらず, 2菌株は不活性のままである. 一方で代謝副産物の初期濃度が高いと2菌株は活性化し, フェニトロチオンの分解が起こることがわかった. 更にはフェニトロチオン分解酵素を添加して共代謝を促進することにより, 分解が起こりやすくなることが示唆された.
更なる数理モデルの解析から, TFEE 株は代謝副産物が低濃度であっても活性状態を維持出来ること, MN1 株が代謝副産物の資化する際, 取り残しが必要であることが示唆される. 2菌株は共同でフェニトロチオンを代謝することによって, 単独では利用出来ないニッチを利用出来るようになったと考えられる.