| 要旨トップ | ESJ54 一般講演一覧 | | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨 |
一般講演 F1-01
植食性昆虫にとっての寄主植物の質は時間的・空間的に変化する。そのため植食性昆虫がいかにして質の高い寄主を選ぶかは重要である。多くの昆虫で質の高い新葉への選好性が見られるのもそのためである。本研究で用いるヤナギルリハムシはヤナギを寄主植物とする。ヤナギは一般に春先に展葉しそれ以降はあまり葉を出さないため、季節の進行と共に葉は成熟し質が低下すると考えられる。ところが、調査地である和歌山県紀ノ川河川敷のジャヤナギは夏に二次展葉として新葉をつける。そのため同時期に新葉と成熟葉が確認される。本研究ではヤナギを寄主とするヤナギルリハムシを用いて、新葉への選好性があるか、そして新葉で幼虫と成虫の高いパフォーマンスが実現されるかを調べた。
野外調査では、本種は新葉上に集中してみられた。新葉は成熟葉よりも有意に柔らかく、含水率・窒素含有量も有意に高かった。通胴実験では、成虫は成熟葉よりも新葉の匂いに有意に多く誘引された。飼育実験では、新葉で成熟葉よりも幼虫の発育期間が有意に短くなり、生存率も有意に高かった。成虫の産卵数は新葉で有意に多く、寿命も有意に長かった。これらの結果から、本種の成虫には新葉への選好性があり、成虫・幼虫共に新葉で高いパフォーマンスが示されることが明らかになった。