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一般講演 F1-04

適応的な分断色;微小生息場所に依存した効果

*鶴井香織,本間淳,西田隆義(京大院農・昆虫生態)

分断色とは、体の形と無関係な斑紋を体の輪郭に接するように持つことと定義され、これにより捕食者は被食者の輪郭を検出しにくくなると考えられている。分断色の効果はごく最近検証された(e.g. Cuthill 2005)が、彼らの研究では背景色は全く考慮されていない。本研究では、背景色を考慮した分断色の効果について検証した。

ハラヒシバッタでは色彩と斑紋に著しい多型が見られる。これまでの調査で、1)バッタの地色は微小生息地の色環境に適合していること、2)砂地では分断色でない単色型、草地では分断色である二紋型の頻度が高いこと、そして3)単色型はオスのみ、二紋型は殆どメスであることがわかっている。そこで今回、同じ休耕田内で隣接する草地と砂地のそれぞれで採集した単色型及び二紋型個体を用い、背景色に対する斑紋の隠蔽効果を調べた。検証は、ヒトをダミー捕食者とした仮想捕食実験で行った。その結果、いずれの生息場所においても、単色型よりも斑紋型の方が隠蔽的だった。しかし、斑紋型の高い隠蔽効果は、背景を入れ替えると失われた。この結果は、分断色には隠蔽度を高める効果があるが、その効果は微小生息場所の色環境に強く依存することを意味する。すなわち、分断色の効果は万能ではなかった。

次いで、メスには単色型がいないことの究極要因をつきとめるために、単色型の頻度が高い砂地の背景において、紋の有無と体サイズが隠蔽度に与える影響を調べた。その結果、1)紋の有無にかかわらず体サイズが大きくなると隠蔽度は低下すること、2)しかし、隠蔽度の低下は単色型でのみ著しいことが分かった。つまり、単色型のメスは砂地ではとりわけ目立つことが分かった。この結果は体サイズの大きいメスが砂地に少なく、単色型も見られない野外状況と合致していた。

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