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一般講演 F1-05

感潮域に生息するメダカの生態

*佐藤晋太朗(弘前大学),佐原雄二(弘前大学)

メダカ Oryzias latipesは本州以南の日本国内に広く分布し、知名度の高い魚である。近年、絶滅危惧種に指定されたことは記憶に新しい。しかし、その生態や行動は未知の部分が多い。メダカは塩分耐性が高く、かつては海岸に棲む個体群も知られていた(山本 1942、佐々木・伊東 1961)が、現在では海棲個体群は消滅し、開発によって河口部の個体群も現在ほとんどが失われている。

潮間帯や河口部感潮域に生息する魚類が室内の一定条件下で示す概潮汐周期活動については、主にイギリスなどヨーロッパでの研究報告がいくつかある。しかし、それらは概してハゼ類・ギンポ類・カレイ類などの底生魚であり、水面を遊泳するメダカのような魚類における研究例はない。

本研究では、潮汐の影響を受ける青森県高瀬川河口部に生息するメダカ個体群を用いて、潮汐周期及び日周期的な活動性を明らかにするため、室内の一定条件下で、水槽に仕掛けた3本の赤外線ビームをメダカが横切る回数をカウントし、活動を測ることで体内に持つ活動周期を導き出した。また、生息現場で3時間置きに27時間連続採集し、ホルマリン固定した個体を解剖して採餌内容、消化管充満度の周期的変化を調査した。

室内実験の結果は、メダカは概潮汐周期を持つであろうことが示された。周期性は実験個体全てから見られたわけではなく、概潮汐周期を最も明瞭に示したのは、潮汐の影響をもっとも大きく受けると思われる大潮の後に採集した個体を用いたときであった。一方、解剖結果からは、高瀬川河口部にすむメダカは主に植物質を食べており、夜は採餌を行わない昼行性の傾向を持つことが示された。潮汐との関係は必ずしも明らかではなかったが、現場での観察では、潮汐に伴って移動することが分かった。

日本生態学会