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一般講演 F1-09

安定同位体を用いたジュゴンの採食海草種の分析

*池田和子(自然環境研究センター),三原正三(九大・比文),米田政明(自然環境研究センター),小池裕子(九大・比文)

本研究は、ジュゴン(Dugong dugon)の海草種に対する摂餌特性を明らかにすることを目的として、炭素・窒素の安定同位体を用いて、1)沖縄島周辺の海草、2)飼育個体のジュゴン、3)沖縄近海のジュゴン死亡個体の分析を行った。分析の結果、海草のδ13C値はボウバアマモで-4.2±0.7‰、リュウキュウスガモで-6.1±0.9‰、ウミヒルモで-7.2±0.5‰と種によって固有な値を示す傾向が見られたが、ウミジグサ属(-8.4±1.0‰)及びベニアマモ属(-8.7±0.6‰)では値が重なり、種を判別することはできなかった。また、δ15N値からは種間に固有な値を示す傾向はなかった。飼育個体のジュゴン(鳥羽水族館試料提供)については、餌(アマモ)、ジュゴンの毛、ジュゴンの糞の同位体比測定を行った結果、餌→毛ではδ13Cは+2.7‰、δ15Nは+5.2‰の同位体比のシフトを、餌→糞ではδ13Cは-0.9‰、δ15Nは+2.0‰の差を示した。野生ジュゴン3頭(死亡個体:沖縄美ら海水族館試料提供)については筋肉または洞毛を分析し、1)及び2)で得た結果を用いて摂餌海草種を推定した。その結果、2頭はウミジグサ属あるいはベニアマモ属を、1頭はリュウキュウスガモを主に摂餌していたものと推定された。これらδ13C、δ15N値から推定された摂餌海草種は、胃内容物調査の結果や死体が収容された場所の海草種とほぼ一致した。また、洞毛を2mmずつ分割して分析した結果(2mmは11日分の成長に相当と仮定)、そのδ13C 値が徐々に変化することが明らかとなり、ジュゴンが異なる海草種を摂餌している可能性が示唆された。

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