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一般講演 F3-04

カイヤドリヒドラ類の遺伝的分化

*小林亜玲(京都大・理),五箇公一(国立環境研),深見裕伸(京都大・理), 久保田信(京都大・理)

カイヤドリヒドラ類(刺胞動物門, ヒドロ虫綱)は、我が国ではカイヤドリヒドラクラゲとコノハクラゲの2種が知られている。暖海性の種であるカイヤドリヒドラクラゲは、主に沖縄島から神奈川県江ノ島にかけての太平洋側に分布し、コノハクラゲは主に九州から北海道南部の太平洋側に地理的多型である4型が側所分布している(Kubota, 1992, 2003; 久保田, 1999; 足立ら, 2003; Kubota et al., 2003)。両種とも、これまで日本海南部沿岸(対馬と壱岐を除いた九州〜本州の日本海側)では出現しないとされていたが(Kubota, 1992; 久保田, 1999; 久保田, 未発表データ)、2002年に日本海南部沿岸の比較的広い地域で2種の分布が初めて確認され(小林ら, 2004)、現在も定着している。この分布拡大は、壱岐・対馬から対馬海流に乗って漂着した個体群が、近年の日本海南部域におけるレジームシフトの影響を受けて、冬の海水温が上昇し(Senjyu, 1999; 千手ら, 2003; 千手, 2004)、越冬可能になったからだと考えられている(小林ら, 未発表データ)。

カイヤドリヒドラ類の分布拡大経路の解明は、環境変動に伴う外来プランクトン類の侵入動態を予測する上で、重要な基礎データになると考えられる。

本研究では、カイヤドリヒドラ類の分布拡大が、どのような環境変遷および地史に伴って起きてきたかを明らかにするために、地理分布情報とハプロタイプネットワークを併せた階層クレード解析により、地理的分布と遺伝的多型の関係を明らかにするとともに、種分化のプロセスおよび分布拡大の起源を探り、分布拡大に伴う遺伝的交流についても考察した。

日本生態学会