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一般講演 F3-08
これまでに,単一個体群のさまざまな確率モデルに対する平均絶滅時間の研究がおこなわれてきたが,それらは主に,3つのタイプ(離散時間マルコフ連鎖,連続時間マルコフ連鎖,確率微分方程式)のモデルに分類される(Allen & Allen 2003).特に,連続時間出生死滅過程では,平均絶滅時間についての再帰方程式の解が明示的に表現できることが良く知られている(cf. Karlin 1966).しかし,特に,離散時間マルコフ連鎖モデルに対しては,おそらくその定式化や解析の難しさから,十分な検討がおこなわれているとはいい難い.本講演では,近年注目されている,様々な個体群動態のモデルを第一原理によって導出する考え方(Brannstrom & Sumpter 2005)に基づいて,有限集団に対する離散時間マルコフ連鎖の定式化の方法を示し,平均絶滅時間についての再帰方程式を導く.その結果として得られたシステムを数値的に計算することによって,たとえ初期個体数が大きくても平均絶滅時間が短くなることがあるという,連続時間マルコフ連鎖には見られない性質があることがわかった.また,このような方法をメタ個体群動態モデルに拡張することによって,平均絶滅時間がどの程度長くなるのか(cf. Hanski 1999),周期的あるいはカオス的なダイナミクスは果たして絶滅を回避する効果があるのか(Allen et al. 1993),という問題等について考察する.