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一般講演 F3-09

周期的環境下における分布域拡大:積分差分方程式モデル

*川崎廣吉,重定南奈子(同志社大・文化情報)

世代が重ならず,増殖した後,分散を行う生物種が周期的に分断化された環境へ侵入したとき,その分布域をどのように拡大していくかは積分差分方程式でモデル化することができる.ここで用いた積分差分方程式モデルは,世代 t,場所 x に生息する生物の個体数密度を Nt(x) で表すとして,場所 x での増殖をRickerモデル(Nt+1(x) = Nt(x) exp(r(x)-Nt)で与え,場所 x から y への分散確率密度を指数分布による分散核(k(x-y) = exp(-|x-y|)/2)で与えた.ここで,増殖率 r(x) は周期 L の周期関数とし,特に関数を階段関数として,好適環境と不適環境が交互に繰り返すものとした.

この積分差分方程式モデルにおいては,分布域拡大の漸近的な速度を解析的に求めることができたこと,また,それにより,拡大速度が各種の環境パラメータや生物の特性パラメータにどのように依存するか,すなわち,周期的分断化環境が分布域拡大の速度にどのような影響を与えるかを明らかにしたことを報告する.さらに,分散核としてガウス分布を用いた場合の拡大速度との違いなども報告する.

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