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一般講演 F3-11

形質ベース群集モデルによる生態系影響評価の試み

田中嘉成(国立環境研)

環境撹乱要因の生態系影響を評価するためには,環境撹乱要因に対して群集が応答し,その結果,生態系のサービス機能が低下することを予測する理論的な枠組みが必要である。そのような枠組みには,環境要因の変化による群集の状態変化を定式化し,その結果生じる群集の機能の変化を定量的に評価できることが求められる。本研究は,有効なアプローチとして,生物群集構成種の形質に着目して生態系を記載する形質ベース群集モデル(ギルド形質モデル)を提案し,解析を試みた。

ギルド形質モデルは,群集の機能的特性を,環境要求性や生態系機能を特徴付ける種の形質のギルド内分布によって記述する。さらに,(平均)ギルド形質を,種の平均形質値の,種の個体密度(もしくは相対バイオマス)による重み付け平均として定義し,その動態を定式化する。環境変化がもたらす種構成の変化はギルド形質値の分布変化として表わすことができる。機能群の平均ギルド形質値の世代あたり変化は,種の増殖率と形質値との共分散に等しい。さらに,平均ギルド形質値の環境変化に対する応答は,種数や種間競争係数にほとんど左右されないことを,環境勾配モデルおよび資源競争モデルから示した。この結果は,形質ベースの解析が広い適用可能性をもつことを示唆している。

形質ベース群集モデルに基づく生態系影響評価のためには,種の形質を,環境変化に応答する「反応形質」と群集の生態系機能を担う「機能形質」の2つのカテゴリーに分類する必要がある。複数形質に拡張したギルド形質モデルは,機能形質の応答が,応答形質との種間共分散に基づく相関した応答によってもたらされることを示している。生態系への影響は,機能形質の変化として評価する。生態系機能として,群集過程の構成要素の中から生産性と循環性を取り上げ,ギルド形質モデルの野外データへの適用と生態系影響評価を試みた。

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