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一般講演 G1-05

航空写真を用いた半世紀にわたる里山林変動抽出

*小熊宏之(環境研)

本研究では、約半世紀に渡る里山林の樹高成長といった三次元的な変化を求めるために1946年、1967年、2002年撮影の航空写真をデジタルスキャンし、コンピュータ上でのステレオペア解析手法を開発した。日本全国を対象とした航空写真は、第二次大戦後の米軍による撮影分を最古とする。現在ではネガフィルムの複写が国土地理院によって管理され入手可能となっている。国家事業としての国土の航空写真の撮影は、1952年から林野庁が森林地帯に限定して撮影を開始し、更に1961年からは国土地理院による国土基本図調整事業の目的で航空写真の撮影を開始し、ほぼ5年おきに全国を撮影している。これらの航空写真は、森林変化や土地利用形態などを約半世紀にわたり追跡できる貴重な資産である。通常、航空写真は60%以上のオーバーラップを持つように撮影されているが、異なる角度から同じ対象を撮影している部分を自動探索し高さ方向の情報を抽出することで、樹冠表面の標高値であるDSM(Digital Surface Model)を求めた。さらに、国土地理院による地表面高DTM(Digital Terrain Model)との差分から、過去からの樹冠高(Digital Canopy Height Model)の変化を求めた。解析対象地域として選定した神奈川県秦野市周辺の里山林では、宅地化など森林以外の土地利用に変化した場所を除き、森林部分の大半に樹高成長が認められた。果樹園の放棄などによる森林化に加え、スギ−ヒノキ植林地では20m以上の樹高成長が確認された。また、1980年代後半からは竹林面積が急速に拡大していることも明らかとなった。一方で米軍撮影の航空写真は、傷等の画像の劣化や撮影条件が不明であることが解析上での障害となり、これらに対応できる解析手法の開発が今後の課題である。

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